一昨日、妻から今週土曜日用事があるかと聞かれ、ないと答える。それなら、これに行こうと言われる、『イーちゃんの白い杖』。
う~む、正直に言えば、いかにも涙を誘うような雰囲気のする映画はこれまでなるべく避けてきた僕にとっては、チラシを見る限りあまり気が乗らなかったのだが、断るとどんな修羅場が待っているかは、経験則からよく理解している。
ということで、本日午前10時、松坂屋の近くのサールナートホールにあるシネ・ギャラリーへ二人で足を運んだ。入口には11/10~11/23と書いてあったが、好評につき11/30まで継続されるとのこと。
中に入ると、なかなかの混雑ぶり。冒頭でスタッフの方からアナウンスがあって、本日放映後、主演のイーちゃん、お父さん、監督、音楽担当の舞台挨拶があるとのこと。へぇ~、たまたま今日にしたんだけど、ラッキーじゃん。
そして、静かに映画は始まった。
全盲の姉小長井唯織(いおり)ちゃんと、重度障害の2歳違いの弟息吹くんと、お母さんとお父さんとおじいちゃんとおばあさんの20年の物語。テレビ局によるドキュメンタリー映画ということで、派手な演出も、豪華キャストも、荘厳な大地を映すロケも、もちろんCGもVFXもない。
でも、映画がはじまって数分後、妻に誘われて断ろうとした自分を後悔した。
静岡盲学校で先生と二人成長していく姿、弟の息吹君と名前を呼び合う姿、自分の気持をぶつける場所がなくクルクルと回っている姿。静岡駅前の地下道の黄色い誘導ブロックを白い杖でなぞりながら、ランドセルをしょって歩いている姿。そして、それを近くから手を出したいのを我慢しながら見守っているお母さん。
あのランドセルをしょって歩いていた小学生の姿は、目の見えない障害者ではなく、まちがいなくひたむきに生きようとしている「いのち」そのものでした。
そのイーちゃんが言う。自分が壁に立ち向かっていけたのは、弟伊吹くんが何度も入院や手術を繰り返しても必死に生きようとしている姿だったと。
ヴィクトール・E・フランクルの『夜と霧』を読んだとき、僕は衝撃を受けた。人間とは、自分とは何か、深く考えさせられた。そして、この映画も同様だ。健常者ということ、障害者ということ、いのちということ。
映画が終わり、舞台挨拶があり、会場が明るくなって、ホールを出るとそこに、主演女優のイーちゃんがいた。目の見えない彼女の手をとり、握手をしてもらった。その手はとても温かかった。
2018/11/10(土)~11/23(金)10:00~11:55
2018/11/24(土)~11/30(金)10:45~12:40 続映決定!
場所:サールナートホール シネ・ギャラリー
11/17(日) 舞台挨拶 母、監督
11/23(祝)舞台挨拶 イーちゃん、監督、音楽担当
11/25(日) 舞台挨拶 イーちゃん、監督、春風亭昇太(ナレーションを担当)
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