「チャンスは準備された心にのみ降り立つ」

ふざけた文章だけではなくて、美しい文章が書けるようになりたい、と思う。


美味しい料理をつくるには、一流のお店で美味しい料理を実際に食べることが大切なように、美しい文章が書けるようになるためには、美しい文章を読むことが重要だ、と思う。


2007年に出版された『生物と無生物のあいだ』。科学者が書いた本なのに、美しい表現とスリリングな展開に魅了されて、僕はすっかり福岡伸一さんのファンになった。


福岡伸一さんの主張は一貫している。「動的平衡」。すべての生物は、エントロピーの法則に抗えず乱雑さが増していく。それに対抗するために、生物は身体を堅牢にするのではなく、逆にたえまなく身体を作り変え続ける戦略をとっている。文章をアルファベットまで分解して、そのアルファベットをつかって新しい文章をつくるかのように、摂取したタンパク質はアミノ酸に分解され、そのアミノ酸をもとにタンパク質がつくられ続けている。だから、自分の身体は1年前の自分の身体ではなく、さまざまな物質が通り過ぎていくその流れの場が自分なのだと。


先日(と言っても、日本酒を夕方から飲み続けて、知らないうちに清水駅で寝ていて善意の市民に救われたあの5月27日のことだけれど)、待ち合わせ時間までふと立ち寄った本屋で『動的平衡3』を発見。うかつにも、この新刊が発行されているのを半年も見落としていた。そして、この本の副題「チャンスは準備された心にのみ降り立つ」。パスツールの格言を福岡伸一さん流に訳したものだそうだ。


「チャンスは準備された心にのみ降り立つ」


科学という手法を用いて、真実を追い求め続けるが、なかなかそれをつかむことができない。でも、あきらめないで、根気強く、なすべきことを自分の信じたやり方で追い続ける。そして、あるとき、ひょんなことから、その姿が少しだけ降りてくる。いつ降りてきてもよいように、そして降りてきたときに必ずそれをつかめるよう、絶えず準備をしている。そういう心にしか真実はつかむことができない。


「準備された心」この姿勢~構えと言ってもいいかもしれない~というのは、あらゆることに通じるものだと思う。仕事もしかり、スポーツもしかり、芸術もそうだろう。そして、そうした姿勢から幸運にも得られた成果こそ、(いくぶん大げさに言えば)「人生の醍醐味」なのだと思ったりする。


「チャンスは準備された心にのみ降り立つ」


いい言葉というのは、人生を豊かにするヒントを与えてくれると、あらためて思った。



静岡走ろう会

1975年発足の静岡のランニングクラブ。 現「静岡マラソン」の前身となる「駿府マラソン」を立ち上げた歴史あるクラブです。 現在の会員数144名。月2回の練習会に加え、年数回マイクロバスをチャーターしてマラソンツアーを実施しています。 新規会員、募集中。まずは一度、体験参加してみませんか?

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